確定申告・年末調整

一括償却資産と少額減価償却資産の違い。20万円と30万円がポイント

投稿日:2017年8月12日 更新日:

減価償却について調べているといつかたどり着くのが「一括償却資産」と「少額減価償却資産」です。「減価償却に加え一括償却資産少額減価償却資産と複雑でわかりにくい」とならないためには、それぞれのポイントをおさえる事が重要です。

ポイントさえおさえてしまえば、「そうだったのか」と思えます。

難しいと思えば簡単な問題も解けません。まずは気軽な気持ちでお読み下さい。

一括償却資産とは

1単位あたりの取得価額が10万円以上の建物建物付属設備等は減価償却資産となります。減価償却資産となれば、耐用年数定額法定率法等の償却方法を用いて減価償却費を計算します。

減価償却費の計算に慣れていればいいですが、「この資産の耐用年数がわからない」「定率法の計算が複雑」等と悩んでしまいます。

一括償却資産は、取得価額が10万円以上~20万円未満の減価償却資産を取得価額の3分の1各年分に経費(損金)処理できるものです。

噛み砕いていますが、この言い回しがわかりにくいので具体的に考えてみます。

一括償却資産の計算方法

一括償却資産の計算方法は以下です。

一括償却資産の合計額×当期の月数/36=減価償却費(経費、損金算入限度額)

通常の減価償却費の計算であれば取得月(使用開始月)~期末までの期間を計算するのですが、一括償却資産はそんな計算は不要です。

例えば1台15万円のパソコンを一括償却資産として計算(事業年度12ヶ月)すると、150,000×12/36=50,000が減価償却費として処理されます。

定額法定率法等の計算方法に比べて計算が楽です。一括償却資産の特徴はそれだけではありません。3年間で経費処理されるので耐用年数が3年の定額法みたいな感じです。

パソコンであれば通常耐用年数は4年です。4年間で経費処理されるのですが、一括償却資産として処理すると同じパソコンでも3年で経費処理されます。早期で償却されるので嬉しいですね。

しかし注意点があります。購入した翌年(翌期)以降に売却、除却(廃棄、処分等)をしても残額は除却損として経費処理できません。

例 1台150,000円のパソコンを除却した 残額100,000円(2年目)

減価償却資産:100,000円を固定資産除却損で経費処理

一括償却資産:除却した年(2年目)減価償却費50,000円 3年目減価償却費50,000円

一括償却資産は、償却期間中に売却、除却をしても3年間減価償却費としなければならないので注意して下さい。

補足ですが、個人事業主が8月等、期の途中で開業をしても一括償却資産を計算する期間は12/36です。8月~12月までの期間5ヶ月で5/36とはなりません。

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少額減価償却資産とは

少額減価償却資産は、1単位あたりの取得価額が30万円未満の減価償却資産を、取得した年度に全額経費処理できるものです。

取得価額全額が減価償却費として処理されるため、少額減価償却資産には計算方法はありません。

「全額経費処理できて、計算をしなくてもよいって素晴らしい」となっても、誰もが対象ではありません。

少額減価償却資産の対象 ~個人~

少額減価償却資産の対象者は個人と法人では少し違うので、まずは個人の場合です。

個人

1.青色申告

2.常時使用する従業員の数が1,000人以下の中小企業者

3.不動産所得、事業所得、山林所得

青色申告が前提条件になります。個人の所得は全部で10種類あるのですが、少額減価償却資産は不動産所得事業所得山林所得の3つの所得です。不事山(ふじさん)で覚えると覚えやすいです。

副業をしている場合、その副業が事業所得雑所得どちらになるか判断が難しいです。

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少額減価償却資産の対象 ~法人~

法人は個人とは違い所得に種類はないのですが、規模等が個人よりも少し複雑になっています。

法人

1.青色申告

2.常時使用する従業員の数が1,000人以下の中小企業者又は農業組合等

中小企業者とは、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(常時使用する従業員の数が1,000人以下及び資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人等に、発行済み株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人及び2以上の大規模法人に3分の2以上を所有されている法人を除く)

中小企業者が個人と法人で少し違います。

個人は人数だけですが、法人は資本金等が関係してきます。ざっくりと考えると資本金が1億円を超えたり、1億円を超えるような法人が半分以上の株式を持っている会社は適用できないと考えてもよいです。

従業員の数は、平成28年4月1日以後に取得等する少額減価償却資産が対象になります。

少額減価償却資産は300万円以内

少額減価償却資産は1年間300万円以内です。1年間の合計額が300万円を超えた場合は適用できません。

「300万円を超えた」ですが、少額減価償却資産が1年間の合計額が295万円の状態で15万円のパソコンを購入した場合はどうしますか?

正解は少額減価償却資産は295万円、パソコンは減価償却資産一括償却資産となります。

20万円未満であれば、要件を満たせば一括償却資産ではなく少額減価償却資産を適用する事もできます。

少額減価償却資産の適用時期

少額減価償却資産は実は適用時期があります。

平成30年3月31日までに取得等した減価償却資産です。

税制改正で期間が延長になっている制度ですので、適用時期がないと思われがちですが期限はあります。

一括償却資産と少額減価償却資産のマル秘情報

一括償却資産と少額減価資産についてのマル秘情報を具体例で説明していきます。

マル秘情報その1

少額減価償却資産を300万円ギリギリの状態で30万円未満の少額減価償却資産を購入した場合どうしますか?

しおり
300万円を超えた場合は適用できないから通常の減価償却資産じゃないの?

その通りです。しかし取得した資産から順番に少額減価償却資産にする必要はありません。

あや
どういうこと?

例えば個人事業主が2月に1台30万円のパソコンを10台購入したとします。この時点で300万円以内なのでこれ以上少額減価償却資産は適用できません。

12月にさらに30万円のパソコンを購入したらどうしますか?

しおり
12月に購入した30万円のパソコンは通常の減価償却資産にする。

正解ですが、少し違います。

期中に購入した減価償却資産は期間按分されます。

全てのパソコンを通常の減価償却資産とした場合に2月に購入したパソコンは11ヶ月分の減価償却費、12月に購入したパソコンは1ヶ月分の減価償却費です。

2月に購入したパソコン9台と12月に購入したパソコン1台を少額減価償却資産

とした方が減価償却費が多くなります。

あや
なるほど。同じ耐用年数の資産であれば先に購入した方が減価償却費が多くなるからか。

しおり
少額減価償却資産はいつ購入しても全額経費になるから、先に購入した資産を通常の減価償却資産、後で購入した資産を少額減価償却資産にした方が経費が増えるのか。

同じ耐用年数であれば、こういった方法も考えられます。

マル秘情報その2

同じ月に1台30万円のパソコンを10台、1台30万円のコピー機を10台購入したらどうしますか?

あや
パソコン5台とコピー機5台を少額減価償却資産?

しおり
パソコンの方がよく使うからパソコン10台を少額減価償却資産?

コピー機10台を少額減価償却資産

パソコンは耐用年数4年、コピー機は耐用年数5年です。同じ時期に購入した場合耐用年数が短い方が経費が多くなります。

しおり
なるほどね。金額や時期だけじゃなくて耐用年数も重要だね。

あや
耐用年数で減価償却費がかわるからね。

同じ時期であれば、耐用年数に注目をしてみましょう。

マル秘情報その3

減価償却費を計算する方法で定額法と定率法があります。

定額法よりも定率法の方が初年度の減価償却費が多くなります。

金額、時期、耐用年数が同じであれば、償却方法に注目をしてみましょう。

一括償却資産、少額減価償却資産と償却資産税との関係

ここまでの話であれば、「30万円未満であれば少額減価償却資産で処理した方がいい」となってしまいますが、忘れてはいけないのは償却資産税です。

土地や建物であれば固定資産税が課税されますが、実は構築物機械器具備品等の償却資産にも税金が課税されます。これを償却資産税といい、市区町村から課税される固定資産税の一部です。

この償却資産税ですが、一括償却資産少額減価償却資産では取扱いが違います。

償却資産税

一括償却資産   ×(対象外)

少額減価償却資産 〇(対象)

少額減価償却資産償却資産税の対象ですが、一括償却資産償却資産税の対象ではありません。20万円未満の場合、少額減価償却資産と処理すると全額経費になるが償却資産税の対象となる。しかし、一括償却資産として処理すると償却資産税対象とはならないが、3年で償却できます。

悩みますね。

償却資産税の概要

償却資産税はあまり馴染みがないので概要をまとめてみました。

・自分で申告

・毎年1月1日現在で所有している減価償却資産

・固定資産が所在する市町村区毎に申告

・税率は1.4%

・課税標準が150万円未満は非課税

対象資産や申告書の記入方法等は各市町村区のHPをご確認下さい。

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確定申告書等作成コーナー

一括償却資産少額減価償却資産は国税庁HPの確定申告書等作成コーナーで登録ができるので実際に登録してみます。

例は前回と同様で手順は前回の続きです。

減価償却をわかりやすく。「耐用年数」「定額法」「定率法」とは

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取得資産:パソコン

取得月 :平成28年8月

取得価額:150,000円

償却方法:定額法

「1.減価償却資産の種類等」で前回は定額法を選択しましたが、一括償却資産少額減価償却資産黄色の枠で囲っている部分です。実際に登録してみます。

一括償却資産を登録

まずは一括償却資産です。

一括償却資産は登録する部分が少ないですが、以下は補足です。

「1.減価償却資産の種類等」は一括償却資産を選択します。

「2.減価償却資産の細目」は一括償却資産の場合は取得年分です。今回は平成28年に取得したので平成28年を選択しています。減価償却資産の時はここで建物、建物付属設備等を選択していましたが、一括償却資産の場合は取得年分です。

「6.取得価額」は取得価額なので今回は150,000円です。

「11.事業専用(貸付)割合」は資産を事業として使用している割合です。80%を事業として使っている場合は80%です。

少額減価償却資産を登録

次は少額減価償却資産を登録してみます。

一括償却資産と同様に補足します。

「1.減価償却資産の種類等」は中小企業者の特例対象資産を選択して下さい。少額減価償却資産とうい選択はないので注意が必要です。

「3.減価償却資産の名称」は資産の名称です。取得した資産の名称を入力して下さい。今回はパソコンなのでパソコンと入力しています。

「5.取得年月」は取得年月です。減価償却資産とは違い入力は月だけです。取得した年で全額経費処理されるので過去年分は登録です。

「6.取得価額」は一括償却資産の時と同様に150,000円を入力しています。

「11.事業専用(貸付)割合」も一括償却資産の時と同様に80%を入力しています。

減価償却資産、一括償却資産、少額減価償却資産の登録後

減価償却資産一括償却資産少額減価償却資産を例の通りに登録した場合以下の様に登録されます。

上から減価償却資産一括償却資産少額減価償却資産の順番になっています。それぞれが違うので計算結果が違っています。

まとめ

金額 青色申告 上限 償却資産税 償却期間
経費処理 10万円未満 不要 無し 対象外 無し
一括償却資産 10万円以上20万円未満 不要 無し 対象外 3年
少額減価償却資産 30万円未満 必要 300万円以内 対象 取得年に費用
減価償却資産 10万円以上 不要 無し 対象 耐用年数

個人や事業年度が12ヶ月の法人で減価償却資産一括償却資産少額減価償却資産についてまとめるとこんな感じです。

1単位あたり10万円以上は減価償却資産

20万円未満は一括償却資産

30万円未満は少額減価償却資産(青色申告)

少額減価償却資産は1年間で300万円以内

一括償却資産は償却資産税の対象外

とポイントを覚えるだけでも十分です。

しおり
減価償却資産よりも一括償却資産や減価償却資産の方が計算は簡単ね。

ヒロ
[そうだね。ポイントを復習しておこう。/st-kaiwa-315]

あや
10万円、20万円、30万円は覚えてた方がいいね。

 

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税理士を目指して勉強中の30代、2児のパパ。子供の寝顔に癒される。 サイト名が「スマート家事術。」なのに、税金のコンテンツが一番多い事に違和感を覚えつつも更新を続ける。 【取得資格】税理士試験簿記論、貸金業取扱主任者、BATIC(Accoutant Level)等

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